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観測・撮影機器のセッティング

今回使用するカメラは Nikon D40 です.一昔前のデジタルカメラですが,一応,レンズ交換式なので,天体撮影以外にもいろいろと活躍してもらっています.

今回使用したカメラなどの撮影機器とオプションパーツ.左から,予備のバッテリー(バッテリーを一つずつビニールの袋に入れ,さらに専用のケースに入れてある.最近は空港のセキュリティ審査も厳しいので最低でもここまではやっておいた方がよい.),予備のメモリ,カメラのフード,300mmの望遠レンズを装着したカメラ本体,NDフィルター
アメリカ皆既日食で撮影に使用したカメラとその付属品

まずは三脚の2本の足をコンクリートのくぼみにひっかけるようにしてセッティング.このくぼみが固定源になり,より安定感が得られそうです.残りの1本は動きやすいため,三脚を足で蹴飛ばさないように注意しなければなりません.三脚の手前には少し距離を開けて,かばんを置き,三脚の周りを移動するときに自然と注意が喚起されるようにしました.

カメラの雲台は最大食の時の42度にあらかじめ設定してあります.その前後でスムーズに動くことを確認したら,最初の作業であるピント合わせに備えて,太陽とは大きく異なる方向に向けておきます.NDフィルターを装着しない状態で太陽の方向に向けてしまうとカメラが壊れることがあるので,この作業は非常に重要です.

次に,第1接触から第4接触までの予報時刻を書いた紙を入れたパネルを撮影を三脚に取り付け,つづり紐で固定しました.一応,予報時刻は覚えているのですが,パァーと頭の中が真っ白になることがありますので,撮影スケジュールの裏側に予報時刻を書いた紙を入れておきました.これなら準備作業中も,随時,確認することが可能です.

予報時刻を書いた紙を三脚に取り付けたパネルの裏側に入れたところ.これなら準備作業中,自然と何度も確認できるから便利である.
三脚に取り付けた予報時刻

パネルの表側(予報時刻の反対側)は,皆既食前後の撮影スケジュールを書いた紙を入れてあります.皆既日食の場合でも前後は部分食が進行しますが,部分食中の撮影スケジュールはその都度,確認すればいいだけのことです.しかし,皆既前後は撮影を自動化していない限り,薄暗くなる中で猛烈に忙しくなりますので,皆既前後のスケジュールだけはいつでも確認できるように撮影スケジュールのパネルを準備しました.

常に確認したいのはやはり時刻です.腕にはめている腕時計以外に,もう一つの予備の時計を三脚にも取り付けます.時刻はあらかじめ,日本を出発する前にマドラスの時刻に調整しておきました.写真では,腕時計の固定が容易になるように,タオルを巻き付けて,タオルのくぼみに時計が収まるようにしてあります.時計の液晶を直射日光から守るためには帽子が便利です.

三脚に撮影スケジュールのパネルを取り付けてある.さらに,三脚にタオルを巻き付けて,予備の時計を固定したところ.後述するシャドーバンド観察システムも組み立てが完了してから撮影した.
三脚に取り付けた撮影スケジュールのパネル

一応,家内と撮影スケジュールの再確認を行いました.皆既前後の撮影スケジュールはパネルにして三脚にとり付けるのに対して,部分食中の撮影スケジュールは,A4用紙を二つ折りにした紙に手書きです.以前は観測ノートに書いていたこともあるのですが,今は手書きです.乱雑な落書きのようですが,このほうが,一行読み間違えたりする事故の確率がグンと下がります,私の場合は.終わったスケジュールは折り曲げて,どんどんと背後に退避させていくようにしています.

私のところでは,今回は赤道儀のセッティング作業はないので,三脚へカメラを装着するのは,余計な加熱を防止するために8時45分まで待つことにしました(もちろん,一旦,正しく装着できることを確認した上でのことです.念のため!).一通りのセッティング作業を完了すれば,それまでは特にやることはありません.その間にシャドーバンド観察システムを構築したり,朝食をとったりします.

そして8時45分.カメラを三脚に装着,遠方の景色でピントを合わせ,マジックテープで2箇所,動かないように固定します.このとき,後で再度,微調整が可能となるようにマジックテープの先は折り曲げておきます.念のためにもう一度,固定を確認し,忘れずにNDフィルターを装着してから太陽の方向に向けます.この作業を忘れたり間違ったりすると,カメラが壊れてしまうので慎重に行います.

次は画角の調整を開始します.事前の計算によれば,8時53分41秒に太陽の下の縁が有効画面の下の縁に接し,太陽の左端が有効画面の左から 14% の位置に来るように設定すれば,9時00分に太陽が画面の中央に位置することになります.今回は単純に三脚にカメラを付けた経緯台のシステムでの固定撮影ですので,部分食中に事前の計算値と合致することを確認しながら微調整,必要に応じて補正を行いながら皆既日食本番を待つことになります.