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黒い太陽のおはなし 日食の科学と神話
この本の冒頭は,最初は何事もない普段の昼間の光景から始まります.でも,一つだけ,いつもと違うことがあるのです.それは,新月でこれから皆既日食になるのだということ.
話はまもなく,太陽の欠け始め(第1接触)の説明に入ります.第1接触の始まりはいつも静かに始まるのですが,その印象が絵本の力でうまく表現されています.
やがて,徐々に近づく第2接触.そこで,どんな現象が起こるのか,どんな心境に包まれるのか,その不思議な世界にひきつけられた読者は,次第に日食のメカニズムに興味が惹かれることでしょう.
日食のメカニズムを正しく理解することは,通常,大人でも容易なことではありません.特に,黄道(太陽の通り道)と白道(月の通り道)の傾斜角の概念は難しいものです.ところが,絵本はこれらをうまく表現できるのをこの本は証明しました.
日食の現象を一通り知っていると,神話が意味するものがよくわかることがあります.ここは,とにかく読んで感動していただきたいと思います.
皆既日食のときに見られる光景については,特別にページ数を割いて,詳しく解説しています.特に,いろいろなコロナの絵を見ると,早く見たくてムズムズするのではないでしょうか? そして,これから日本や世界で見られる日食の紹介で締めくくられています.
部分日食を観察する時は日食グラスを使用しなければならないことを,文章だけではなく,各頁の絵でそれとなく印象付けられるような工夫,日食の理解を深めるための用語集などの配慮もうれしいです.