南米大陸西海岸(チリ沿岸部)
皆既帯が最初に上陸したのが南米大陸西海岸のチリのラ・セレナ付近です.ここでは,海辺の風景と日食との共演が期待できる他,アクセス性(ラ・フロリダ空港(LSC))の良さや豊富な宿泊施設という点でもツアー,個人旅行とも注目されました.
ツアーでは,JTBがラ・セレナでを観測地に選んだ他,日本旅行はラ・セレナから5号線を北に進んだラ・イゲラを選定しました.その他,阪急交通社,クラブツーリズム,近畿日本ツーリストなど,ラ・セレナを起点として東へとやや内陸に進んだ観測ツアーも人気でした.
もちろん,個人旅行も人気でした.ここでは太平洋岸を走る幹線道路である5号線とその周囲の海岸,高原地帯での観測地について検討してみましょう.
ラ・セレナとその近郊の太平洋岸の海岸では,ラ・セレナをはさんで,南はコキンボの近く,北はラ・イゲラあたりまでの範囲が,西海岸での日食観測地の候補として最も注目されました.5号線沿いには広く西を見渡せる箇所がところどころにあり,どこで観測すればいいか,迷う程.それだけに,どの観測地も当日は多くの日食観測者で混雑することが予想されましたがなんとか,観測できたようです.
ラ・セレナの海岸での定点カメラの動画を紹介しましょう.
皆既日食2019@チリ・ラセレナ 定点映像
本影錐と水平線付近の空の色の変化が美しいです.
都市部の混雑を避けつつ,中心線にも近いラ・イゲラを近くの高台で西が見渡せる場所が魅力的ではあるものの,海岸近くの山沿いは雲が出やすくなるのが難点です.もちろん,皆既の時間帯に西に傾いた太陽が雲にかからなければよいわけで,前日までの下見の際に周囲の地形と大気の流れを観察してから観測場所の確保をするなど,手間を惜しまず,慎重に観測地の選定をなさった方もおられたことでしょう.
ラ・イゲラから5号線をさらに北へ進むと,一旦,山間部に差しかかった後,乾燥した高原地帯に出ます.天文台があるだけあって,晴天率が高く,西の方向に雲が出にくい地点はツアーの候補地となりそうなほどです.
海岸沿いに出るには舗装されていない脇道を進むことになります.その点,今回は夕刻の日食ですので,移動の手間を惜しまなければ,美しい海岸をバックに,一生の想い出となる日食を堪能できたかもしれません.
以上のように,一口にチリ西海岸と言っても場所により景観はさまざまで,個人旅行,ツアーともに魅力的な箇所がたくさんあります.あなたなら,どこでどんな皆既日食を観たかったですか?
ラ・セレナ近郊
皆既帯が南米大陸に最初に上陸する観光都市として注目されたラ・セレナ.ラ・セレナで水平線上の黒い太陽を観測したい方にはもちろん,ラ・セレナを起点としてより好条件での皆既日食観察をするために,ラ・イゲラ,エルモジェ,ビクーニャまで出かける方にとっても魅力あふれる都市として注目されました.
ラ・イゲラとその近郊
ラ・イゲラは2019年7月2日の南太平洋・南米皆既日食で,皆既中心線が通る晴天率が高い町.世界各国の天文台が林立する地域にも近く,アクセスの良い理想の観測地の一つとして注目されました.