皆既日食はなぜ起こる
皆既日食が起こるメカニズムを簡単にご紹介します.
皆既日食という天文現象は,地球上から見て月が太陽を全部隠すことですが,なぜ月が太陽を完全に隠す皆既日食という現象が起こるのでしょうか?また,なぜ地球上のごく狭い範囲でしか見られないのでしょうか?
皆既日食が起こるメカニズムを理解すると,その理由がよく理解できます.
月という地球の衛星が太陽の前を通り過ぎる現象
月は地球の周りをまわっている衛星でしたね.月はおよそ1か月で地球の周りを1周しています(公転).そしてもし,地球上の一点から見て,月が太陽の前を通り過ぎる過程で月と太陽が完全に重なって覆い隠してしまえば,その地点で皆既日食として観測されるのです.
日食は新月の時に
皆既日食が起こる時は,必ず新月です.しかし,新月の度に皆既日食を見ることができるわけではありません.新月の時でも,皆既日食どころか部分日食(月が太陽の一部を隠し,太陽が部分的に欠けて見える現象)すら起こらないことも多いのです.
地球と月の軌道の関係で
皆さんご存じのように,地球は太陽の周りをまわっています.そして,その地球の周りを月が周っているのですが,月の軌道は地球が太陽の周りをまわっている軌道に対して約5度傾いています.ですから,新月であっても必ずしも太陽と月が重なって見える(日食が起こる)わけではないのです.
月の影が地球上に落ちる時
月に対して太陽と反対側には影ができます.影は,太陽の光がさえぎられるところですから,影の中に入ると太陽の一部または全部が見えません.つまり,日食が起こるのです.
月の影には,太陽が完全に隠れて見えなくなる「本影」という影と,太陽の一部分だけが隠れて見える「半影」という影があります.
本影の中に入ると皆既日食が,半影の中からは部分日食が見られます.
(月が遠くにあって本影の先が地表に届かない時は,本影を延長した擬本影の中で金環日食が見られます.)
本影の先が届く狭く細い帯状の地域のみ皆既日食が見られる
皆既日食を見るためには,月の本影の中に入る必要があります.本影という影は先が細くなっていますので,地球上で皆既日食が見ることができるのは,本影が地球上に届き,なおかつ本影が通過する狭く細い帯状のごく一部の地域に限られてしまうのです.
そのため,地球上の一点で居ながらにして皆既日食を見ることができる頻度はきわめて低く,平均して340~360年に一度と言われています.
「皆既日食はなぜ起こる」のまとめ
以上のように,皆既日食が起こるメカニズムを理解すると,皆既日食が起こるためには,太陽,月,地球の相対的な位置関係が一直線に並ぶ必要があることがわかります.また,地上に月の本影が届いている必要があり,その本影の中という,ごく狭い範囲内にいなければ見ることができません.
皆既日食を見るためには,この条件を2つとも満たすように,適切な日時に適切な場所にいなければならないということがわかります.多くの場合,海外も含めた遠隔地へ出かけていかないと見ることができません.そのためには,費用もかさむ上,時間の確保も必要で,相当な決断を迫られることから「遠征」と言われます.