日食の進み方
日食(特に皆既日食)がどのように進行するのかを知っておくと,観測や観望の時にパニックになることなく,日食という天文ショーをたっぷりと楽しむことができます.
皆既日食と言っても,いきなり皆既食になるのではなく,最初は太陽が少しずつ欠けていく部分食が進行します.そして,太陽が全部隠れる皆既食が数分間続いたあと,また少しずつ太陽が姿を現わす部分食が進行します.
各段階で注目すべき現象が異なりますので,日食の進行と経過を理解しておくことが大切です.
欠け始め(第1接触)
日食の始まりは,第1接触と言われ,太陽と月が接した瞬間,ということになります.第1接触は,「食の始め」や「日食の始まり」などと表現されることもあります.古い文献などでは,「初虧(しょき)」と記されている場合もあります.
第1接触が過ぎると太陽が欠け始めるのですが,通常は太陽の西側から欠け始めます.特に,皆既日食の日食中心線上で見ると,ほぼ真西に近い方向から欠け始めるのを見ることができます(皆既日食にならずに部分日食になる場合などは,北西方向から欠け始めるなど,西以外から欠け始めることもありますが,中低緯度地方では通常は東側から欠け始めることはありません).
部分食の進行
第1接触が過ぎると,部分食が進行していきます.
皆既帯(皆既日食が見られる地域)以外で観測している場合は,部分食のまま食の最大(もっとも大きく欠ける状態)を迎えることになります.
皆既帯で観測している場合は,部分食がどんどん進行していって,最終的には皆既食になるのですが,皆既になるまでの時間は,通常1時間から1時間20分ぐらいです.
太陽が細くなると多くの面白い現象が見られます.特に,部分食の終盤から皆既食直前にかけて,魅力的な現象が集中しますので,部分食の後半に差し掛かったら,観測スケジュールを再確認しましょう.
木漏れ日に欠けた太陽が投影されたり,第2接触直前になると シャドーバンド が見られることもあります.
皆既の始まり(第2接触)
太陽が全部月に隠された瞬間が皆既食の始まり,つまり,第2接触です.第2接触の直前には,ダイヤモンドリング などの美しい現象が見られます.
なお,辺りは,皆既になる少し前から暗くなり始めます.この間にさまざまな興味深い現象が次々と見られます.あらかじめ,観察計画を綿密に立て,見落とさないようにしましょう.
皆既食の始まり(第2接触)から皆既食の終わり(第3接触)まで,長い場合でも数分しかありません.
食の最大
太陽が最も月に覆われた状態(皆既中の場合は,太陽の中心が最も月の中心に近づいた瞬間)を指します.
皆既日食の場合は,理論的には最も暗くなる瞬間です.
2009年7月22日の皆既日食の時のように,継続時間が長い日食では,食の最大前後でもコロナなどの状態,周りの風景の色彩の変化がじっくりと楽しみます.
皆既食の終わり(第3接触)
第3接触は,第2接触の逆で,太陽が完全に月に隠されている状態が終わる瞬間です.
第3接触の時に見られる ダイヤモンドリング は,それまであたりが暗かっただけに特に美しいので有名です.まるで空に浮かぶダイヤモンドのようで,「この世のものとは思えない,言葉では表現できない最高の美しさ!!」などと賞賛されています.
是非,この貴重な瞬間を見逃さないようにしましょう.写真撮影などもこの第3接触直後のダイヤモンドリングのほうが撮影しやすいようです.
再び部分食
第3接触が終わると,どんどん太陽が姿を現わします.
第3接触直後の部分食の状態でも,シャドーバンド など,見どころがたくさんあります.ちょうど,第2接触前とは逆の順序で次々と現れますので,第2接触前に見落としていた場合は,忘れずに見るようにしましょう.
日食の終わり(第4接触)
第4接触は,月が太陽と離れる瞬間,つまり,日食の終わりです.
これで,2~3時間に及ぶ大自然のドラマがすべて終わるわけです.もう一度見たい場合は,次回の日食までお預けというわけです.
第4接触が終わると,周りは後片付けをする人たちであわただしくなりますが,次の日食のために,気づいたことなどはその場でメモをしておきましょう.自分が観測した地点の風景写真も忘れずに撮っておきたいものです.後々,さまざまな気づきが得られ,あなたの貴重な財産となることでしょう.
「日食の進み方」のまとめ
以上のように,皆既日食になる日食の場合は,始まり(第1接触)から終わり(第4接触)まで2~3時間も続きます.魅力的な見どころは皆既の前後の数分間に集中していますが,前後の部分食も充分に楽しみたいものです.
日食の全経過にわたって観察のスケジュールを立てておきましょう!