2015年北大西洋
この皆既日食は,2015年3月20日にカナダ沖の北大西洋からフェロー諸島,スヴァールバル諸島を通り,北極海に至る北極地方で,皆既継続時間の最大は2分47秒です.
(皆既日食の起点が北大西洋で,皆既帯が北大西洋を進んでいる距離が最も長いことから,通例にしたがって「北大西洋皆既日食」という名称にしていします.なお,公式に他の名称が使用された場合には,変更することがあります.)
この皆既日食まで1年をきり,各社からの皆既日食ツアー情報が発表されつつあります.最大の問題は,地上で観察する場合で,皆既帯が通る陸地が少なく,人口も少ない地方であることです.当然のことながら,宿泊施設等の確保も非常に困難となることも予想されるため,個人での参加の難易度は非常に高いでしょう.仮設の宿泊施設を設営するにしても,極寒の地での暖房の確保などの防寒対策,強風対策など,考慮すべきことがたくさんありますので,今から遠征を計画される方はツアーに参加することになるかと思います.
2015年皆既日食ツアー企画者は,早めに準備と計画をスタートさせ,事前の下見を充分に行った上で,防寒対策,天候の急変等の非常事態も充分検討し,安心して皆既日食が観察できるように準備を進めてくださっているようです.たとえば,1年前の同時期に,実際に現地に滞在し,例年の天候や近年の状況のみならず,皆既日食当日の緊迫した状況を想定しながら,五感でありとあらゆる情報を得た上で安心安全なツアーの企画を進めてくださっているとのことです.
一方,飛行機から観察する場合は,北欧や西ヨーロッパの空港からのアクセスが可能圏内を皆既食帯が通ります.すでに,(株)セブンカルチャーネットワークのセブン旅ネットから,チャーター機からの皆既日食観測ツアーを発表されています.今後も各社からツアー等の企画が追加発表されるかもしれませんので要チェックです.気温から,よほどの防寒対策を施さない限り,洋上観測はさすがに難しいでしょうね.そういった意味でも,特にこの日食では,機上での観察に期待したいところです.忙しい方にとっても,今後,安価で参加しやすい機上観測ツアーが発表されることを望みます.
そして,皆既日食ファンなら是非,注目しておきたいのがオーロラです.オーロラも太陽活動による荷電粒子が地球の上層大気との衝突によって起こる現象です.フェロー諸島は低緯度オーロラが見られるかもしれません.スヴァールバル諸島は,オーロラが頻回に出現する地域よりは北に位置していることから,実際に見られるかどうかは運次第ではありますが,何が起こるかわからないのが天文現象です.皆既日食中のコロナの形状とともに,同時に観測したいものです.今年はオーロラの当たり年だという予想もあり,数多くのオーロラツアーが企画されていますので,今年中にいずれかのツアーに参加してノウハウをつかみ,来年の皆既日食に備えるというのもよい方法です.
そのほかにも,観測地の地質学的特徴,北極地方ならではの景観など,魅力も尽きません.近年の皆既日食で現実的にアクセスが可能なものの中では最も北で起こる皆既日食だけに,ぜひ見逃したくないものです.
なお,この 2015年3月20日の北大西洋皆既日食 の中継録画は,Slooh Community Observatory のサイトで見ることができます.皆既直前の彩層と皆既直後のダイヤモンドが美しいです!